【智頭病院小児科医の書庫 】
《 追加資料 》 < 智頭小学校保健委員会 講義資料 2021/10/8(金) 15:30~
★ 季節性インフルエンザ : 2021/22年シーズンの流行予測と予防接種
★1 2021/22年シーズンの季節性インフルエンザの流行はない!
δ株を主体として、新型コロナウイルスが優位であり、2021/22年シーズンも季節性インフルエンザの流行はない。
流行に係るウイルス相互の干渉作用があり、季節性インフルエンザは2020/21年シーズン同様に流行しない。
上記は、東京都感染症情報センターの資料を活かした自学用・備忘録図です。
2009年当時のインフルエンザ汎流行までは、季節性インフルエンザのA型は、Aソ連型(H1N1)とA香港型でした。が、A(H1N1)pdm09型インフルエンザが汎流行した後、10年余の間、Aソ連型の流行は皆無です。
現在、新型コロナウイルス感染症がα株の汎流行から、現在は水痘並の強い感染力を有したδ株が世界中で流行期にあります。このため、いわば、季節性インフルエンザが流行することは考えられません。
実は、昨シーズン初秋に、「(α株主体の)新型コロナウイルス感染症汎流行により、インフルエンザの流行はない」と、親しい人・外来看護師さんなどには予測を話していました。なお、国・報道は、新型コロナウイルスとインフルエンザの流行で健康被害をもたらしかねないから、インフルエンザワクチン接種を(例年以上に)積極的に推奨していました。が、流行は皆無でした。
★2 インフルエンザのワクチン接種は、個人的には推奨しません。
日本の医療制度の特異性:国民皆保険制度がある。保険診療で迅速検査が実施できて、治療薬の処方も可能。
ワクチン接種は任意である。接種に個人負担金を生じる。
インフルエンザワクチンの効果は費用対効果で劣る。
※ 私事、小児科医になってから、感染症での発熱・欠勤は皆無です。インフルエンザワクチンの接種は皆無です。迅速検査が保険診療で可能になった以降、2007年初春の夕に近い午後に、外来でデスクワークをしていたら、急にくしゃみ感と多量の水様性鼻汁が流出し始め、(自身、アレルギー性鼻炎があるので、気に留めず、ティッシュで拭っていたら、フト、アレルゲンが飛ぶ環境ではないことに気づき、)マサカと、綿棒に流れ出る鼻汁を吸わせて、検査したら、A型のバーは無変化で、B型が強陽性となり、コントロールバーも着色しました。この日は、急患がなく、外来看護師との接触はなく、帰宅後も妻との接触を避けました。3-4時間程度で、鼻汁は完全に止まり、勿論、全身倦怠感等も皆無でした。診断:インフルエンザB型(局所免疫で治癒)
2013年初春にも同様な時間帯・環境で、急に水様性鼻汁が出始め、自虐的に「マタカよ!」との感を抱き、検査したらA型が強陽性fで、B型は無着色、次いでコントロールバーが着色しました。この際は1時間程度で、勤務時間内に治癒しました。診断:インフルエンザA型(局所免疫で治癒)。
季節性インフルエンザの流行は、軽症例が室内、電車内などでウイルスを飛散し、他者に感染させることで始まります。そうした例は、高熱・全身倦怠感等、全身症状を呈する病状にないことから、医療機関を受診することはありません。
不顕性感染例や無熱の軽症例、一過性の発熱例など、丁寧に家族のり患状況等を問診することで、(A香港型、Aソ連型、B型が流行していた)少なくとも四半世紀以上前から分かっていたことす。
当時は、鳥取県立中央病院勤務中でした。が、大都市圏の基幹病院に勤務する専門医は、ピラミッドモデルの頂上付近に位置する重要例を診ることが多いため、軽症例については論じられることが希少でした。
軽症例が多いと分かったのは2009年当時のインフルエンザ汎流行に際し、わが国では”水際作戦”が展開されましたが、私事、無効だとみていました。実際、神戸、高槻等の高校で”集団風邪”の流行があり、当時の新型インフルエンザと分かりました。診断例は、海外渡航歴や、同歴のある人との接触歴がないことが疫学調査で分かり、さらに、(調査方法の詳細は分かりませんが、きっと)協力が得られた高校生から問診と抗体スクリーニング検査の結果、未受診・無熱例などが多いことが判明しました。
実は、こうした例に遭遇する可能性を考慮して、小児科外来で啓発用に作成してる資料「インフルエンザシーズンの健康生活」は、2007/11/7以降、改訂しないで活用しています。関連する「インフルエンザ:ケアとキュア」です。これらの啓発資料は、「外来で用いている啓発資料 pdf」に揃えてあります。
なお、妻、3人の子どもたち、2人の孫娘たちもインフルエンザワクチン接種は皆無です。
丁寧に日頃の生活を整えておくことが大切であることは、論を待ちません。
◆ 関連するオリジナル資料です。クリックすると解説文付の頁に移動します。
★ 参照:ミニ臨床講義[インフルエンザ診療アラカルト]鳥取県東部医師会報
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◆ インフルエンザワクチンの効果:厚労省 Q&A の抜粋 令和2年11月18日時点
Q.21: ワクチンの効果、有効性について
・・・ 基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。・・・
「インフルエンザワクチンの有効性」は、ヒトを対象とした研究において、「ワクチンを接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準とした場合、接種した人が病気にかかるリスクが、『相対的に』どれだけ減少したか」という指標で示されます。・・・
「インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%」とは、下記の状況が相当します。
・ワクチンを接種しなかった方100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)
・ワクチンを接種した方200人のうち24人がインフルエンザを発病(発病率12%)
→ ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%
ワクチンを接種しなかった人の発病率(リスク)を基準とした場合、接種した人の発病率(リスク)が、「相対的に」60%減少しています。すなわち、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%(上記の例では30人のうち18人)は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた、ということになります。・・・
Q.22: 昨年ワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されると判断されたウイルスを用いて製造されています。・・・
Q.24: インフルエンザワクチンの有効性が、製造の過程で低下することはあるのでしょうか?
インフルエンザワクチンは発育鶏卵を用いて製造・・・過程で、ウイルスの遺伝子に変異が起きる場合があり・・・遺伝子に変異が起きた場合、実際に流行しているインフルエンザウイルス(流行株)と、ワクチンのもとになっているインフルエンザウイルス(ワクチン株)とで、免疫への作用の程度に違い(抗原性の乖離)が認められる場合があります。・・・ヒトでは一定程度の有効性が保たれる・・・毎年の流行に曝露されることで一定の交差反応性のある抗体を有しているためと考えられています。
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★ 四半世紀以上軸ブレなしの私見
ワクチン接種をしない場合でも流行中のインフルエンザウイルスに対して、ヒトは交差反応性のある抗体を産生し、発症を阻止(~不顕性感染)、ないし、軽症化(~局所免疫・無熱での治癒や一過性の発熱)に導いている。
インフルエンザワクチンは、とくにA型の変異により、毎シーズンの接種が必要となります。一方、日本では、1989年11月からインフルエンザの迅速検査が保険適用となり、治療薬も保険適用で、国民皆保険制度の基、インフルエンザの診断・治療は世界に例がないほどのアクセス性(医療費の個人負担軽減、医療機関受診の適時性)があり、免疫系が保たれ、受験等の社会的事情がない場合は、ワクチン接種の必要性が劣ることになります。
これらのため、日本ではインフルエンザワクチンの定期接種(無料)対象は、(加齢により免疫能が低下傾向にある)65歳以上、60~64歳の日常生活制限者(免疫能が低下する基礎疾患を有する人)に限られています。つまり、それ以外の方は、任意接種で、(地方行政が多少の金銭負担をしていますが、)家族構成・職業や社会事情等で、必要な方は”自腹を切る”ことになります。即ち、免疫能が安定している学童・生徒には無用と考えています。乱暴ではありません。免疫能が安定するための生活、脱水症に陥らないことなど、具体的な日々の健康増進の取り組みがあってのことです。
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